2020年05月20日 [コラム]
厚生労働省が推進する「患者のための薬局ビジョン」とは
医薬分業の取り組みにより、薬剤師や薬局を取り巻く環境が変化しつつある昨今。医師と薬剤師が役割を分担することで患者の安全性を確保できるようになるなど、医薬分業による成果が上がる一方で、門前薬局の乱立といった、患者の負担が増大するなどの問題点も指摘されるようになりました。
そのような問題解決を目的として、厚生労働省が2015年10月に策定したのが「患者のための薬局ビジョン」です。今回は、「患者のための薬局ビジョン」がどのようなものかご紹介します。
患者のための薬局ビジョンとは
「患者のための薬局ビジョン」とは、「かかりつけ薬剤師・薬局機能」を軸に、「健康サポート機能」「高度薬学管理機能」から構成されるビジョンのことです。患者本位の医薬分業の実現を目的としています。
かかりつけ薬剤師・薬局機能
患者のための薬局ビジョンの軸である「かかりつけ薬剤師・薬局機能」は、「服薬情報の一元的継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」「24時間・在宅対応」「医療機関等との連携」という3つの項目から成り立ちます。
主治医と連携し患者のお薬手帳の内容を把握し、服用薬などの一元的かつ継続的な把握や、夜間や休日における在宅患者のサポート、処方内容を確認して処方医に対するフィードバックを行うなどの取り組みを行います。
健康サポート機能
現在、薬局は医師に処方された薬を受け取る場所という認識が一般的です。しかし、かつて薬剤師は「街の科学者」という位置づけで、薬局は薬や健康について、気軽に相談へ行ける場所でした。
薬局の目的について原点回帰し、健康について気軽に相談へ行けるようにする取り組みを行います。
高度薬学管理機能
一般的に、患者は医者から処方された薬をもらい服用します。その際、だいたいのケースで、その薬が処方された意図について、患者が理解していることはありません。
薬を渡す際などに、医師の処方意図や、副作用などについて患者にしっかりとアドバイスし、患者が処方薬に関する理解を深められるよう取り組みを行います。
患者のための薬局ビジョンが作られた背景
患者のための薬局ビジョンが作られたのは、「患者のためのかかりつけ薬局」を実現するためとされています。
現在、医薬分業により、薬局調剤医療費は7兆円を超え、処方箋受け取り率は70%に達しています。しかし、患者が薬局へ行くという手間に見合うほどのサービスが行われているかというと、一概にそうだと言えません。医薬分業の目的は医師と薬剤師がそれぞれの領域でプロフェッショナルの役割を果たすことで、そのためには「かかりつけ薬局」を作り、服薬情報を一元化する必要があります。
しかし、だいたいの患者が、医療機関の近くにある「門前薬局」に行くことになるケースがほとんどで、服薬情報の一元化は実現していません。そこで、医薬分業の本来の目的を果たすため、「かかりつけ薬局」の実現を目指して、患者のための薬局ビジョンが作られたのです。
患者のための薬局ビジョンにより、薬剤師の存在がより身近なものになり、患者が安心して処方薬を服用できるようになると期待されています。
今後も患者のための薬局ビジョンは改革が進むと考えられますので、その動向にしっかり注目しておくようにしましょう。